立ち退き問題の解決を弁護士に依頼する5つのメリットと2つのデメリット

 はれやか法律事務所では、これまでたくさんのお客様から、立ち退き問題に関するご相談をいただいてきましたが、受任前にいただく、よくあるご質問の1つとして、「立ち退き問題を弁護士に依頼するメリット・デメリットは?」というものがあげられます。
 ほとんどのお客様にとって、弁護士に相談するのは初めてのこと。「突然立ち退きを請求されて、誰かを頼りたい気持ちはあるけれど、弁護士費用は高いと聞いているし、自分のケースを依頼するのが正しいかどうか、分からない。」不安な気持ちになるのは当然のことだと思います。
 そこで、今回は、立ち退き問題を弁護士に依頼するメリット・デメリットを記事にまとめました。

 

1.立ち退き問題の解決を弁護士に依頼するメリット


  メリット①:オーナーの主張する「正当の事由」に的確に反論することができる

 多くの事例に共通するのは、オーナーが立ち退き請求に至った理由や経緯に関して、「建物の老朽化により取壊すことにしたから」と一言述べる程度で、詳しい説明をしようとしない、ということです。

 しかし、本来、オーナーによる立ち退き請求が適法なものとして認められるためには、「正当の事由」が必要です。そして、この「正当の事由」は、立ち退きによってテナントが通常大きな不利益を被ることから、簡単には認られません。
 したがって、テナントの立場では、絶対に立ち退きたくないと考えている場合はもちろんのこと、立ち退き料の金額次第で退去はやむを得ないと考えている場合でも、オーナーの主張する「正当の事由」に簡単に納得するべきではありません。
 疑問をぶつけて回答を求めたり、より詳細な説明を求めたりして、オーナーの主張する「正当の事由」がどの程度のものなのかを確認するべきです。

 たとえば、上の例で言えば、建物の老朽化と一口に言っても老朽化の程度は様々であり、いつでも倒壊のおそれがある程に建物の構造部分が経年劣化しているのか、それとも周辺建物と比較して築年数が経過し、建物が競争力を失いつつあるという程度に留まるのかによって、意味するところは全く異なります。
 オーナーの主張する「正当の事由」がそれほど重要ではないと言うことを明らかにできれば、むしろ、立ち退きによってテナントが被る不利益の大きさにスポットを当てて議論を進めることができるので、立ち退き請求そのものを断念させたり、立ち退き料の額を増額させたりすることができます。

 実際、当事務所でお引き受けした事例の中には、オーナーに「正当の事由」を問い質して立ち退き請求を断念させた事例があります。また、裁判に発展してから受任した事例ですが、耐震診断によって老朽化が一定程度進行しているとはいえ、それだけでは「正当の事由」があるとは言えないとの主張を裁判官に認めてもらったことがあります。このため、オーナーは、土地建物を高額で売却するために立ち退かせたいという、立ち退き請求の真の目的を明らかにせざるを得なくなり、裁判官の和解勧試に従って、立ち退き料の額を裁判当初の提示金額から14倍に増額した和解に応じました。

 このように、テナントの立場では、オーナーの主張する「正当の事由」に的確に反論することが重要です。
 しかし、ほとんどのテナントは、法的知識に乏しく、紛争への対処に不慣れです。このため、正しく反論することができなかったり、見当違いの主張をしたりして、立ち退き交渉が行き詰ってしまうかも知れません。

 これに対して、立ち退き問題に精通している弁護士は、「正当の事由」に関して多数の裁判例を初めとする豊富な知識があり、交渉のノウハウを有しています。オーナーの主張する「正当の事由」を厳しく追及して、立ち退き請求を断念させる、あるいは立ち退き料を増額させることが期待できます。
 これは、立ち退き問題を弁護士に依頼する大きなメリットの一つです。


  メリット②:足元を見られず、交渉段階から高額の立ち退き料を引き出せる

 中には、オーナーの立ち退き請求に対して、立ち退き料の金額次第では出ていっても良いと考え、立ち退き料の金額を自ら交渉しようとするテナントもいます。
 しかし、テナントが直接交渉することは危険が伴います。と言うのも、オーナーの立場からすると、テナントが立ち退きを強く拒絶していればいるほど、立ち退き料を増額せざるを得ないとの方向に心理が働くのに対して、立ち退き料を自ら交渉しているテナントは、金額次第では立ち退くという意思を露わにしており、足元を見られやすいからです。
 立ち退き交渉に長けた弁護士は、このようなオーナーの心理をよく理解していますので、足元を見られるような仕方で立ち退き料の提案をすることはありません。

 また、オーナーの立場からすると、テナントが弁護士に依頼している場合には、生半可な立ち退き料では解決しないだろうと考え、裁判等に発展する事態を覚悟せざるを得ません。裁判となれば、解決まで相当長期を要し、オーナーの資金計画に支障を来たしかねませんから、交渉段階でより高額の立ち退き料を提示する動機付けになります。

 このように、弁護士に依頼すれば、オーナーから足元を見られることはなくなり、交渉段階からより高額の立ち退き料を引き出すことが期待できます

  メリット③:正当な立ち退き料の額を説得的に主張することができる

 以前の記事でも明らかにしたとおり、立ち退き料にはいわゆる「相場」がありません。これは、立ち退き料が、「正当の事由」と相関関係にあり、対象建物の立地・築年数・賃料・広さや、テナントの業態、建物の使用目的・使用状況、経営状態その他諸々の事情を勘案して、事例ごとに決定されるものだからです。
 このため、立ち退き問題を巡る法律や裁判例に詳しくないテナントにとって、立ち退き料の額を説得的に主張することは困難です。オーナーの立場からすれば、テナントが自ら提案してくる立ち退き料はどこまで行っても素人考えであり、取り合ってもらえない可能性があります。

 これに対して、立ち退き問題に精通している弁護士は、立ち退き料の算定の考慮要素を網羅し、裁判例を意識しながらテナントに有利な主張を展開することができます。また、借家権割合法、貸家控除法、損失補償基準などの複数ある算定方法のうち、その事例において最も有利と考えられるものに基づいて、具体的かつ説得的に、立ち退き料の額を提案することができます。

 このように、弁護士に依頼すれば、正当な補償を求めて立ち退き料の額を説得的に主張することができます

  メリット④:思わぬ落とし穴に嵌まらないで済む

 オーナーの立ち退き請求を受けて任意に立ち退く場合、立ち退き料の金額は、最も重要な条件の一つと言えます。
 しかし、実は、そのほかにも、オーナーと交渉しておかなければならない条件があります。立ち退きの時期、立ち退き料の支払時期、原状回復の範囲、敷金の返還等です。
 十分な立ち退き料を得ることにばかり目が行き、これらの条件についてきちんと協議しておかないと、思わぬ不利益を被ることもあります。たとえば、引っ越し先を確保していないのに立ち退かなければならなくなったり、資金繰りに窮してしまったりということも考えられます。
 実際、私たちの事務所には、ご自身で交渉を進められた際、これらの付随条件について十分に話し合わなかったため、敷金を取り返せなくなってしまったテナントからのご相談なども寄せられています。

 弁護士に依頼しておけば、このような思わぬ落とし穴に嵌まる事態は避けられます。移転先を探す十分な時間を確保した上で、事前に立ち退き料の一部を受け取り、円滑な移転を実現することが可能です。

  メリット⑤:不安から解放される

 立ち退き問題はテナントにとって本当に深刻です。オーナーの請求が認められてしまえば、営業をすることはできなくなりますし、十分な立ち退き料を受け取れない場合も、移転先での営業再開に目途が立たなくなってしまうからです。
 実際、私たちの事務所にお越しになられるテナントの皆さんは、一様に、立ち退きを求められてから本業が手につかなくなってしまった、不安で夜も眠れない、と苦しい胸中を語ります。ほとんどの方にとって、このような問題は初めての経験であり、手練れたオーナーや不動産業者とのやり取り自体が大きな精神的重圧として感じられるようです。

 しかし、私たち弁護士に依頼すれば、このような重圧から解放されます。一切のやり取りを弁護士が窓口となって行うことになるからです。もちろん、要所要所で、担当弁護士と打ち合わせていただく必要はありますが、担当弁護士はテナントの味方です。決着が着くまでの間、基本的な対応は弁護士に任せ、今までどおり、本業に集中することができるのです。
これらは、直ちに経済的利益に結び付くものではありませんが、日々の営業に専念したいテナントに安心を与えるものであり、弁護士に依頼する大きなメリットであると考えます。

 

POINT

・立ち退き問題に精通している弁護士は、オーナーの主張する「正当の事由」を厳しく追及し、立ち退き請求を断念させたり、立ち退き料を大幅に増額させたりすることが期待できる。
・立ち退き料を請求しても足元を見られる心配はなく、交渉段階から高額の立ち退き料を引き出すことができる。
・正当な補償を求めて、立ち退き料の額を説得的に主張することができる。
・思わぬ落とし穴に嵌まることなく、円滑な移転、営業再開を実現することができる。
・不安から解放され、日々の営業に専念することができる。

 

2.立ち退き問題の解決を弁護士に依頼するデメリット

  デメリット①:弁護士費用がかかる

 立ち退き問題を弁護士に依頼すると、弁護士費用がかかることになります。
 弁護士費用は、通常、依頼するときに発生する着手金と、解決したときに発生する報酬金の2種類からなり、それぞれの法律事務所で具体的な金額は異なります。
 立ち退き問題に不慣れな弁護士に依頼してしまった場合、着手金・報酬金が高額であると、十分に増額することができなかったときに費用倒れのリスクが生じます。
 他方、立ち退き問題に精通している弁護士に依頼すれば、着手金・報酬金を支払っても十分な立ち退き料を獲得することができると期待できます。
 したがって、立ち退き問題を得意としている法律事務所に依頼をすることが重要です。

 なお、私たちの事務所では、万が一増額した立ち退き料の額が弁護士費用を下回るものであった場合には、差額分を返金することにより、「依頼損」が生じないことを保証しています。

 

  デメリット②:紛争が激化するおそれもある

 テナントの中には、オーナーとの話し合いがなるべく早期かつ円満に行くことを期待している方もいらっしゃるかと思いますが、立ち退き問題に不慣れな弁護士が対応してしまい、テナントの意向を酌まずにオーナーに敵対的な連絡を取ってしまうと、オーナーの態度が硬化し、紛争が激化してしまうなどのリスクがあります。
 立ち退き問題を早期かつ円満に解決するためには、オーナーとテナントが誠実に協議して、双方折り合いのつく着地点を探す前向きな姿勢が肝要です。
 したがって、弁護士に依頼する際には、テナントとしての考えをきちんと伝え、十分に意向を酌みながら交渉を進めてくれる、立ち退き問題に精通した弁護士を探すことが重要と言えます。

 以上に述べてきたとおり、立ち退き問題の解決を弁護士に依頼することには5つのメリットがある一方で、デメリットもあります。
 もっとも、デメリットについては、依頼する弁護士次第のところがあり、基本的には、立ち退き問題に精通し、テナントの意向を十分に酌んで対処してくれる弁護士に依頼することができれば、メリットがデメリットを大きく上回ると考えています。
 いくつかの法律事務所を回り、ご相談への回答内容が十分満足の行くものであったか、また弁護士との相性などを見極めて比較検討していただくのも良いかも知れません。また、その際には、無料法律相談を実施している事務所を訪問すれば、費用も抑えることができます。

 私たちの事務所には、これまで多数の立ち退き問題を解決してきた実績があります。初回の法律相談は無料ですので、まずはお話だけでもお聞かせいただければと存じます。